歯科医療を考える

現代の医学は西洋医学が主流で、めざましい進歩発展をとげている反面、難治性皮膚炎、腰痛、片頭痛、慢性疲労性症候群、肩こりなど、慢性疾患の患者さんは年々増加している。

現在の医学では原因が分からなかったり、治療効果の出ない病気の中に、口の中が原因で発症しているものに焦点を当てた歯科医療を紹介してゆきます。

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身体は不思議がいっぱい
平成26年7月12日
   「アポロニア21」 26年8月号(日本歯科新聞社)掲載
         
 興奮を覚えながら目が離せなかったFIFAワールドカップ。 この時期、昔の伝説に残るゲームが放映されることもありますが、現在のサッカーとは別の競技のよう。フィットネス、スキル、ゲーム構成力、どれをとっても進化の度合に驚かされます。人間はどこまで変われるのでしょう。本当に人間の身体には興味がつきません。
そこで今回は人間の身体について、今までとはちょっと違った観点も交えてお話します。

性格は身体の影響を受ける
人は持って生まれた性格があるといわれています。それはあまり身体とは関連がないというのが通念ではないでしょうか。しかし、患者さんの話を聞いていると、性格は身体の状態に左右されやすいと思うことが多々あるため、いくつか例を挙げてみます。
【例1】 昔から通っている患者Aさんから、「最近、母がボーとしていることが多く、物忘れもひどくなっているので見てほしい」と頼まれました。 その後しばらくして、お父さんと一緒にお母様を認知症外来に連れて行ったら、お父さんの方がひどいとの診断。
Aさんの話では、「そういえば最近、お父さんが怒りっぽくて、仕事の打ち合わせを忘れることもある」とのこと。そこで認知症の改善を念頭に、義歯を作ると同時に、日常生活の中で電磁波の被爆がひどいように思われたため、環境改善も指導しました。お二人とも、治療が終了するまでには半年ほどかかりました。
その後、Aさんが自分の治療で来院した時、こう言っていました。「おかげさまで、父は物忘れもなくなり、仕事も以前のようにこなしています。母はまた以前のように外出するようになり、お友達といろいろな会にも出席するようになりました。でも一番変わったことといえば、このごろ、父と母がいたわりあって、本当に仲が良いことです。こんな両親を見るのは初めてです」。
【例2】 知り合いの接骨院から紹介されたBさん。主訴は慢性でした。不適合充填物の除去と、咬合改善に努め、改善するまでに1年半ほどかかりました。 
改善した後にBさんはこう言いました。「以前はお局様状態で、後輩の態度やちょっとしたミスにイライラし、上司の理不尽さに憤慨していました。 でも、最近はあまり気にならないんです。 毎日がとても楽です。あのころのことを思い出すと、何てギスギスして嫌な女だったんだろうと恥ずかしくなります」。
【例3】Bさんの紹介の方で、やはり主訴は慢性疲労とさまざまな不定愁訴のCさん。来院するといつも「肩と首が痛い」「腰が痛い」「手足が冷える」等々、不具合のデパート状態でした。さすがに治療は長期にわたり、2年ちょっとかかったと思います。紹介してくれたBさんいわく、「最近、Cさんと会ったんですが、すごく声が大きいんです。前は本当に小さな声で、笑うこともあまりなかったのに、まるで別人のようでびっくりしちゃいました」。
誰しも体調が悪ければ、機嫌も悪くなります。体調不良が長期にわたれば、気持ちもなかなか前向きにはなりにくい。傍から見た人の性格って、案外体調によるところも大きいのでは・・・。 元気なら大きな声も出る。素敵な笑顔も出る。前向きな発想も生まれ、 人生上向く。人の幸せや運気って、健康あってのものなのではないかと思うことがあります。

男と女で治療アプローチも異なる!
 この年になって、つくづく痛感するのは男と女の違いです。夫婦喧嘩のときに、つくづく男女のモノの捉え方の違いに気づくという話ではなく、診療の話です。
 婦人科はあるのに男性科はありません。生理や出産、乳がん、子宮がん、更年期障害など女性特有のことがあるので分かれているのでしょうが、肩凝りや眼精疲労、めまい、頭痛などといった一般的な症状でも、その原因が男女では違う場合が多いようなのです。昨年、ふと女性の方がどうも再発率が多いようなのと、気候の影響を女性の方が受けやすいことが気になりました。
そう言えば、女性には月経があり、月の周期の影響を受けやすいと昔からいわれています。妻が更年期の時は、大変な苦労をしていたことも思い出しました。そこで、女性については婦人科系との関連を調べるようにしたところ、一見同じように見える症状の治療でも、やはり男女で原因が異なるようでした。
バイデジタO―リングテスト※を使うと、肩凝り一つ取っても、その根本的な原因は何かを予測することができます。通常は仙骨、足首、手首辺りが原因のことが多いのですが、女性の場合はそのほかに婦人科系が原因となることが結構あるのです。そこで、検査の基本的要項に、女性の場合は子宮と卵巣を加えたところ、それ以来改善率が上がり、再発率も減ってきました。
さらに、O―リングテストや電磁波等の話をすると、受け取り方や納得の仕方にも男女差があるようです。両者とも目に見えない上、一般に情報が知れわたっていないため、男性は疑心暗鬼になる人が多いのですが、女性は抵抗なく受け入れてくれる人が圧倒的です。
右脳と左脳をつなぐ脳梁は女性の方が太く、左右の脳が綿密に連携するため、目の前で起こる変化や自分の体調、感情の変化に対して敏感であるといわれています。五感や直感での判断を重視する女性と、言葉や理論などの裏付けを重視する男性との違いが出ているのかもしれません。

身体における口の役割
 歯科大学の6年生で院内実習が始まった時に、先輩が咬合調整や総義歯の調整を行って甲状腺機能障害や糖尿病の患者さんを治しているのを見学したのが、今の私の原点だったように思います。それ以来、咬合に興味を持ち、顎関節症と向き合い、歯科と全身との関連をずっと追求してきました。多くの素晴らしい師との出会い、友人との出会いの中で、成長させて頂いたのは間違いないのですが、一番の師は誰かと聞かれたら、「患者さん」と答えます。
 臨床の現場は待ったなし。 一生懸命やったから改善につながるとは限りません。患者さんとトラブルになることもありました。 しかし、懲りない性格と、旺盛な好奇心で頑張っていると、患者さんがさまざまなことを教えてくれるのです。

患者さんと謎解きの日々
 患者さんと協力し合って新しい治療法を見つけたときは、本当にうれしくなり、「この方法でみんな治せるのでは!」などと舞い上がります。しかし、しばらくすると、その方法では解決できない患者さんが決まってやって来ます。根がお調子者なので、気を付けていても慢心に陥り、そして鼻をへし折られる・・・。そんなことの繰り返しです。痛い目に遭っても懲りずに前に進んできたおかげで、身体における、口の驚くほどの役割と影響を知ることができました。  
 ここ最近、治療中の私の頭の中から、「咬合」「噛み合わせ」「顎関節症」などという言葉や認識が、全くなくなっていることに気付きました。昔は本当に四六時中、頭の中にあったのに・・・・。今あるのは、「目の前の患者さんの症状の原因はなんだろう?」「何が自然治癒力の妨げになっているのだろう?」 「どうすれば治せるだろう?」「そのためには、どのような口腔環境の改善をすればよいだろう?」という思いだけなのです。 
そんな毎日が、不思議探検のようで楽しいのですが、あまりに治療法やツールが急テンポで変化していて、自分の中でまとめきれていない状態になっています。 
そんなわけで、連載を書く事が難しくなってきました。文章に表せると感じかれる時期まで、しばらくお休みをいただこうと思います。
 今まで長い間、好き勝手なことを書かせてくださった、「アポロニア21」の編集部の方々に感謝するとともに、お読みいただきました皆様にも心より感謝致します。(連載終わり)
 
 
※筋の緊張(トーヌス)を利用して生体情報を感知する検査手技。ニューヨーク在住の日本人医師・大村恵昭博士が1977年ころに考案した方法